「山」に思う。

凍えるような冬の朝、はるかな山の稜線がくっきりと見えた。

冷たい風に身を縮めるようにして歩いていたが、ひとたび山を望めば、すっと背筋が伸びるから不思議だ。

日本の国土は、7割以上が山地と丘陵地。

山と日本人は本来、切っても切れない関係にある。

都道府県名に一番多く含まれる漢字も「山」で、山形、山梨、富山、和歌山、岡山、山口と6県ある。

「岡」を加えれば、静岡と福岡も。

俳句の世界では、季節ごとの山の変化が巧みに表現される。

今の時季、冬の静まり返ったさまは「山眠る」。

夏は青々とした緑から「山滴る」、秋は紅葉で彩られるので「山粧ふ」。

そして春は「山笑ふ」。

躍動の季節を迎えた喜びが生き生きと伝わってくる。

古来、人々は山を見つめ、山と心を通わせてきた。

堂々とそびえる山を望んでは、心を新しくする。

烈風にも動じず、泰然自若としているその姿に、自身もそうありたいとの誓いが湧き上がる。

人生にもまた、それぞれの「山」がある。

自分自身の最高峰へ、その頂上を誇らかに見上げつつ、一歩一歩、着実に前進しよう。