主観と客観の間にある「経験的な言葉」の力

Leica M4 / Summicron 5cm f2 (Tri-X400)
コラム

脳を損傷した人の治療に役立つものに

「経験的な言葉」がある。

 

手の不自由な患者に手をあげるように言う。

すると「力が入らない」と言う主観や、

「動かない」という客観の答えが返る。

”ではどんな感じか”と尋ねると

「鎧を着ているみたい」。

これが主観と客観の間にある

「経験的な言葉」

そこで「軽い鎧を着ているように動けますか」と呼び掛けると、

手が動き出す兆しを見せるそうだ。

 

現実に起きていることを「経験的な言葉」で表現すると、

脳内の仮想現実に合った動作が準備されるという。

作業療法士の菅原洋平氏は、

スポーツでも好調なチームほど”力まずいこう”などと声を掛け合うのは、

こうした行動を促す言葉の力を知っているから

(『すぐやる!「行動力」を高める”化学的な”方法』文響社)

と指摘する。

 

友を励まし、動かす「言葉」は寄り添う真剣さの中で紡ぎ出されるものだろう。

それが蘇生への大きな希望となる。