常に「今」を見つめていた、女優・市原悦子さんの女優魂

「むか〜し、むかしのことじゃった……」。

優しい声と独特の語り口で、お茶の間に日本の昔話を届けてきた女優の市原悦子さん。

「家政婦は見た!」シリーズをはじめドラマ、舞台などで活躍し、多くのファンに愛された。

今月、82歳で亡くなった。

2年前に自己免疫性脊髄炎を発症し、活動を休止。

昨年春からテレビ番組のナレーションで復帰した。

今年、再入院したが、その時も病室に台本を持ち込み、仕事に準備を怠らなかったという。

最期まで女優魂を燃やし続けた市原さん。

役作りについて「演技に対してうぶで、純でありたいと思っています。それには稽古に徹するしかない」「目の前の課題に、無心で、真心で取り組むことにより、必ず新しい何かが生まれます」と。

常に「今」を見つめていた。

過去の成功や挫折にとらわれず、未来を思い煩うことなく、ただ目の前の課題を見つめ、全力でぶつかっていく。

その繰り返しの中に自身の成長と向上があり、人生の豊かな実りもあろう。

「今」を懸命に生き切った人の残す人生の軌跡は、すがすがしく、美しい。